クゥリさんがまた勝ってる...
USUM期には毎月のようにオフライン大会で入賞するプレイヤーの姿がそこにはあった。当時のレギュレーションはBO1ではあったがそこまで結果を安定させていたのは本当に驚異的であったと感じる。当時のプレイヤーランクを作るのであれば指十本には入っていたのではなかろうか。
対するスズ、こちらはHazeコミュニティの皆に愛されるプレイヤーでもあった。プライベートで自身が中心となるオフ会も開催し、そこに友人を呼び遊ぶ姿も見られた。今でもオーガナイザーとしての一面を見せる。
Hazeというオフライン大会は主催とすTとその周りの人間が中心となって構成されており、クゥリもスズもその一員だった。第1回から彼らは強くなり、Hazeも共に成長し今では大規模オフライン大会の一角を担う。「強い人が集まるコミュニティ大会」ではなく、「集まった人が強くなった」というある意味コミュニティ大会の理想とも言える大会の準決勝はその代表的な人間で行われた。
今回は2023年9月23日、第5回は主催とすTの誕生日となっている。
準決勝第1試合は「クゥリ VS スズ」です。
主催とすTがそうアナウンスすると二人は嫌な顔をした。が、これは認め合っている故だった。席に着くと談笑を始めた。二人の仲はすこぶる良いことが伺える。
お互いにBO3は不慣れ、特に「スズはよりによってもお前か」と苦しそうな表情を見せる。
互いに席についた。周りのギャラリーと楽しそうに話すスズ。対するは敵は目の前にいると画面を見つめるクゥリ。
「クゥリと戦いに来た」と、赤いジョイコンを握りしめ、スズはそうクゥリに伝えた。
「よろしくお願いします」と、冷静ながらも声に気迫を込め、クゥリはスズに伝えた。
スズ
ウインディ トドロクツキ ディンルー
ハバタクカミ オーガポン碧 サンダー電
クゥリ
両者共にクッション+スイーパーというシングルバトルにおいては応用的な構築を握る。
スズは相棒のウインディと、その耐性や「いかく」を活かしたサイクルを組む。トドロクツキは「碧の仮面」にて「はたきおとす」を習得した。そのトドロクツキが苦手なフェアリータイプに強いウインディと、炎や鋼さえいなければ一貫しやすい草タイプの高速アタッカーを並べた構築。7世代ではカミツルギ、8世代では「グラススライダー」を軸にしたゴリランダー、そして9世代はスカーフハバタクカミにエナジーボールなどを持たせていたが、オーガポンという彼を構成するラストピースを手に入れた。
対するクゥリは初手ヒードランから場を作りブラッキーからエースを展開する構築。ハバタクカミは「でんじは」+「たたりめ」と初手の展開と後続のスイーパー両方をこなせる構成を取っている。
特筆すべきは「でんじは」ハバタクカミ+ガブリアスの構成。この2体は当時のランクバトルで猛威を振るっており、その最先端を相棒のブラッキーを添えてこのHazeに持ち込んでいる。
クゥリもスズもUSUM期においては己の相棒を添え自信を最大限に活かした所謂「固定構築」を握っていたが、プールの変動が激しい今作においてはそれが叶わない。
ながらも。相棒を添え、お互いの得意な戦略を現環境に落とし込み、チューニングを終え、今、相見える。舞台も整った。
ゲーム1
初手でスズから繰り出されるのはオーガポン(碧)クゥリから繰り出されるのはハバタクカミ。
「話し合おう」とクゥリは伝えた。当然引きに合わされて「とんぼがえり」や「はたきおとす」を打たれるのが嫌だからだ。カミが「ツタこんぼう」で倒れかねないのでヒードランに引く。
スズは透かさずテラスタル。テラスツタこんぼうでハバカミを捉えたがヒードランに受けられる。
「つっよ!!」
ヒードランに微細なダメージが入る。
対戦が進むと賑やかなのはいつもクゥリだ。一方、クゥリのエナジー持ちのハバタクカミを引かせることに成功したスズは冷静だった。
スズのディンルー引きに合わせてヒードランは「おにび」を放つ。命中したところでディンルーは少しずつ削れる。
ヒードランはステルスロック、ディンルーもステルスロック。お互いにスイーパーでの一掃を見据えた
「ブーストエナジーを1ターンで失ったのは痛いんじゃねぇの」と、スズ。たしかに「おもかげやどし」で素早さを上げたオーガポンの上を取りうるエナジー持ちのハバタクカミを無力化させたのは大きい。スズのオーガポンはここから猛威を振るう。
ディンルーの火力を削いだならと、ヒードランはハバタクカミに引く、そこに合わせてカタストロフィを当てる。HBに厚いクゥリのハバタクカミならここからディンルーを大きく削れるか。
スズのディンルーはまだ戦える。ハバタクカミに削られてはならず、ムーンフォースは一発は耐えるならと強引にオーガポンに引いた。
クゥリはこの1ターンを見逃さなかった。ガッツポーズが右手からでる。
ハバタクカミ の でんじは !
地面タイプのディンルーに対して「ムーンフォース」の圧力を利用した一手。オーガポンの足を奪った。この交代読みでゲーム1は決したといっても過言ではない。
クゥリのハバタクカミは「たたりめ」でオーガポンを削る。そして返しの叩き落とすをハバタクカミが耐えた。スズは驚く。これが落ちればまだ繋がっていたかもしれない。オーガポンは再びムーンフォースを貰い落ちる。
スズのラストはサンダー、ステルスロックで体力が削れる。ハバタクカミから「ムーンフォース」を受けてから「じゅうでん」で特防を上げる。
そしてハバタクカミは「ちょうはつ」。サンダーの「はねやすめ」を封じて「ムーンフォース」で処理した。そもそもニ発分を耐えられる体力ではなかったらしい。
残ったディンルーを捉えたところでクゥリの勝利。
「考えていいですか」と一言、クゥリ。
「いいですよ」と返すスズ。諦めてはいないが、クゥリを認めている声色だった。
彼は明らかに劣勢に立たされていることを自覚していた。
ゲーム2
ドランカミガブリアスクゥリ
両者「お願いします」と挨拶、気合いが入る。
クゥリの初手はヒードラン、スズはディンルー。お互いの狙いはこの初手から分かる。
ヒードランとディンルーの対面。お互いに「ステルスロック」を撒きたいがとりあえずはディンルーを「おにび」で弱体化させなければ始まらない。
「しかし、攻撃は外れた」
ディンルーが鬼火を避けた。スズは透かさず「じしん」を押している。
何とかヒードランは耐えてくれたが、「オボンのみ」を食べて残り3割無いくらい。
流石に焦るクゥリ。今日は確実に乗っていたがここに来て崩れる。「ステルスロック」を撒けずにディンルーに「おにび」だけ入れてヒードランは退場した。
繰り出すのはハバタクカミ。ディンルーは火傷による微細な削りしか入っていない。
ハバタクカミは「ムーンフォース」を打つ。ディンルーは「オボンのみ」を食べて体力は6-7割程度。返しの「カタストロフィ」でハバタクカミを半分削る。
クゥリは「ムーンフォース」を再び放つ。これが急所に当たりディンルーを突破した。それでもスズは余裕の表情を見せる。繰り出されるのはサンダー。
ハバタクカミは「ムーンフォース」を放つ。サンダーは返しの「ほうでん」。
サンダーはもう一発耐えそうだった。
お互いに急所も追加効果も引かずにゲームが進む。サンダーの体力は赤ゲージのままハバタクカミを突破したが、このサンダーが盤面に残ったのがクゥリのとっては追い風立った。
クゥリのラストは、ガブリアス。ポケモンシングルバトルの主人公にして第5回HazeにおけるMVPが降臨した。
起点になってはいけないサンダーは透かさずハバタクカミに引く。
ゲームエンドを見据えた剣舞はスズの首元を捉えた。
お互いにテラスタル。スズのハバタクカミはフェアリーテラスタルであり「こだわりメガネ」。等倍タイプであればガブリアス程の耐久であっても「ムーンフォース」で吹き飛ばす。
スズ、これには流石に苦い表情だった。勝負は決したと言っても良い。
メガネテラスムンフォでガブリアスの体力を6割ほど削る。大きな削りだがもう関係ない。「じしん」でハバタクカミを落としてラスト1体。
残り体力が僅かなサンダー。ガブリアスの「スケイルショット」でサンダーを倒してクゥリの勝ち
しかし、攻撃は外れた !
ギャラリーが叫ぶ。クゥリは今日はじめての動揺を見せた。
鋼テラスをした画面のガブリアスは微動だにしていない
サンダー の ほうでん!
ガブリアスは残りHP 1持ちこたえた。今度崩れ落ちたのはスズ
祈るクゥリ、次の無事スケイルショットを当てて勝利を決めた
「対戦ありがとうございました」両者挨拶をした
「夢を見せるなよ...」
最後の最後、偽りの希望を持たされたスズが弱々しくも、でもやはり相手は強かったと認める声でその言葉を吐いた。
鬼
緻密なダメージ感覚、展開予測、ことシングルバトルにおいては選出、その全てを満たすプレイヤーこそ多いが、彼の強みは対戦相手の心理を読み切り、その試合における重要な一手を的確に通す。一見出鱈目な択を必然にする彼のプレイングはそう形容された。
ブラッキーは決してTierこそ高くないが、鬼の隣にいるには十分なほど似合いすぎる。数年前の夜空はたしかにそこにあったという。
Haze#5 準決勝 勝者 クゥリ