【テキストカバレージ】葉桜杯 -秋之陣- 準決勝 へるぴん VS クリフと

敗者 クリフと

2021年11月開催、葉桜杯-秋之陣- 予選第4ラウンドを勝利し、本戦の切符を掴み取った一人目の人間が居た。

秋空の下、歴戦の勇者は挨拶を返す。

「対戦ありがとうございました」

ポケモン歴は10年以上に渡りポケモンソルジャー所属、公式大会最終一位を獲得した男の名はへるぴん。数々の実績を携えて参加したこの大会もまた彼の礎になる事を誰もが予感していた。

「ホウオウは草技を持ってたんですね」

陽気に返したのはクリフとだった。ポケモン歴は2年程のFrontier運営所属のプレイヤー。ランクマッチでは最終2桁を複数回取っている。

誰もが知っている歴戦の勇者と8世代を駆け抜けるプレイヤーが再びこの準決勝配信卓の場で相見える事となる。

「よろしくお願いします」

へるぴんが扱うホウオウループ。初手ダイマからの受け駒による詰ませはこの環境における非常に強力な戦術。特にヌオーの詰ませ性能は凄まじく、特性「天然」によってザシアンを受ける切る.

対するクリフとはラグラージ+ザシアン。ホウオウ軸に対しては特別何かの回答を持っていなければ到底崩すことは出来ない。鍵になるのはサンダーと一撃ウーラオス。それぞれ「命の珠」と「拘り鉢巻き」を持っており、特に鉢巻きウーラオスに関しては通し方次第で勝てる可能性が十分にあった。

予選ではホウオウの「ダイソウゲン」によってラグラージを一撃で落とし、そのアドバンテージを維持し、逃げ切ったへるぴんの勝利で幕を閉じたのである。

だがしかし再戦となった今、へるぴんのホウオウにダイマックスを切らせた後に一撃ウーラオスで崩しきるというプランが明確になった。これを2戦通せばクリフとの勝ちとなる。

・初戦

初手はホウオウラグラージ対面。チラつくのはやはり「ダイソウゲン」。クリフとは透かさずサンダーに引く。

へるぴんが選ぶのは「ダイジェット」、「欠伸」に対するケアが怪しい「ダイジェット」ではあったが2人は理解していた。「ダイソウゲン」があるからラグラージは突っ張れない。

ホウオウの持ち物は「命の珠」。サンダーは受かっていない。会場はどよめいたが二人の理解者はどこにもいない。試合はゲーチスのテーマに乗せて淡々と進む。

クリフとは透かさずラグラージダイマックスを切り盤面を返す。ホウオウはラッキーに引いて「ダイストリーム」を躱すが、こうなればラグラージで「ステルスロック」を撒き、ホウオウの体力を削れる。

クリフとの3体目はもちろん一撃ウーラオス。へるぴんの選出はホウオウラッキードヒドイデであり、ステルスロックを撒かれたのであれば一撃ウーラオスは止まらない。まずは一戦目を勝ち取った。

あと一本となったクリフと。しかし、へるぴん。決してここから容易に負けるプレイヤーではなかった。

・2戦目

再びホウオウとラグラージの初手対面。へるぴんは頑なにダイジェットを放つ。

次のターン、ダイジェットに合わせてラグラージを合わせることができればいいがサンダーは居座りを選択。しかしへるぴんが選んだのはダイジェット、サンダーを落としていく。

こうなるとどうしようもない。続くダイソウゲンでラグラージを落とし3戦目にもつれ込む。

ギガドレインがあるからこその初手の択。お互いにやりたくないそれではあったが、この択から逃げたプレイヤーが不利になるのは明白だった。

最初の3ターンさえ逃げ切れれば…勝利の女神はクリフとに微笑む。

・最終戦

終戦が始まる。初手の対面はホウオウとサンダー。

ホウオウはやはり初手ダイマックス。サンダーはボルトチェンジですぐに逃げラグラージに退く。

もちろんラグラージは大きく削られ次のダイジェット圏内に押し込まれる。

残り2ターン

ラグラージは「ダイジェット」で縛られており、ダイマックスを切っても「ダイソウゲン」で縛られている。

ならば一度「ダイウォール」を使用し、次のサンダーバックでダイマックスターンを枯らした上でラグラージを再展開する事を選択した。

次のダイマックスターン、サンダーバックをすればこの「ダイウォール」と合わせてダイマックスターンは枯らしきれる。そうであればクリフと側のサンダーを用いた返しからゲームを進め、ラグラージの再展開、そしてウーラオスによる制圧を狙うしかない。クリフとは既に大きく不利な状況だった。

ダイバーン

へるぴんは全てを理解していた。中間択として存在する「ダイジェット」は自らの首を絞める行為に等しく、それ以上にサンダーの引き際に合わせて「ダイバーン」を撃つことは即勝ちに繋がる。仮にラグラージが「ダイストリーム」を撃ってきた場合も天候の晴れによってダメージを軽減できる。

へるぴんの「ダイバーン」は一度「ダイウォール」で凌いだものの、その択を提示されるとクリフとのラグラージも身動きを取れない。

残り1ターン

サンダーに引いたら負ける。ラグラージを落とされてもまだゲームが続くのであれば...

こうなると既に不利なクリフとの手は動かなかった。ホウオウは透かさず前ターンの圧を利用して「ダイソウゲン」を放つ。ダイマックスしてるとはいえ4倍弱点の前ではラグラージは耐えられなかった。

繰り出したのは一撃ウーラオス。もう、これしかない。

一撃ウーラオスは決死の覚悟で「不意打ち」を放つ。「命の珠」と「ボルトチェンジ」で僅かに削れたホウオウが「不意打ち」を受けると二度と羽ばたくことは無かった。

会場からは歓声が上がる。まだ勝負は分からない。むしろウーラオスが残っているのであればクリフと側が有利にさえ思えた。

しかし、追い込まれているのは彼自身だった。

電磁波身代わり

四世代のバンガブ、五世代のボルトシャンデラ、六世代のクレッフィゲンガー、七世代のクレセゴーリ、その全てをその目で見てきたへるぴん最後の砦であるラッキー。

ラッキーの構成はその電磁波身代わりであり、クリフとは予選でこのラッキーに屈している。

会場内のクリフとだけがラッキーの「身代わり」に怯え、へるぴんからは明確な勝ち筋が見えている。このウーラオスが「不意打ち」で拘ったことはラッキーの展開を許す事を意味する。

しかしへるぴんは攻め手を緩めない。ガラルヒヒダルマを繰り出し一撃ウーラオスを削りに行く。ウーラオスの「不意打ち」をガラルヒヒダルマが耐え、返しの「氷柱落とし」でウーラオスを削る。

そして繰り出されるはラッキー。

「不意打ち」で拘ったクリフとのウーラオスが引いてサンダーを繰り出した。暴風混乱から何かが起きないかと懇願する。しかし、サンダーの珠暴風もラッキーの前では身代わりを壊す事にすら至らない。

そして時間が迫り来る。ラッキーの身代わりを一回で壊せない以上、最終ターンはラッキー有利で対戦を終える。そうなればTODで敗北するのはクリフとだった。このままサンダーを動かし続けても、羽休めがあるとは言え、勝つ事は叶わない。ラッキーが暇潰しで撃つ電磁波はウーラオスの息の根を止めかねないものではあったが、このままでは負けてしまう以上やるしかない。

ウーラオスに全てを託し、麻痺を掻い潜る。一度でも痺れればもう、次は無い。
湧き上がる歓声の中ただ一人、静かに覚悟を決めた。

ラッキーの産卵に合わせてウーラオスを繰り出す。ウーラオスと身代わりが残ったラッキーが対面した。

ウーラオスの「暗黒強打」、対してラッキーは「電磁波」を放つ。

一割に恵まれること無くウーラオスは麻痺状態となる。

もう、引けない。

ラッキーが選ぶのは当然身代わり。一個目の人形が置かれたその時だった。

ウーラオス は しびれて うごけない !

叫ぶへるぴん、落胆するクリフと。

この時点で勝負は明白だった。

ラッキーの「地球投げ」でウーラオスが削れるともう戦意を喪失していた。ウーラオスが再び痺れると時間内にラッキーを突破する事は不可能となった。

「対戦ありがとうございました」

対戦が終わり会場は暖かい拍手に包まれた。

お疲れ様でした。私はクリフとに声をかけた。

「良い試合でしたよ、惜しかったですね」

「ホウオウは切ってたんで無理なんですよね、仕方無いです」

笑いながら返すクリフと。それでも割り切ってるとは言え悔しくないプレイヤーなどいない。ただ、彼の眼差しは次の戦いを見つめていた。

優勝者以外のプレイヤーは敗北してその日を終える。新旧プレイヤー対決は終わってみれば、予選込みで通算成績3勝1敗、へるぴんの圧勝で幕を閉じた。

葉桜杯-秋之陣- 準決勝第一試合

勝者 へるぴん